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「ふわぁ……」
手のひらで大きく開いた口を隠しながら、とぼとぼと洗面所に向かう。
まだ完全には覚醒出来ていないらしい。
キュッ――
軽く蛇口を捻ると勢いよく冷水が流れ落ちる。
それを両手で掬いとり、バシャバシャと顔を洗った。
手に触れたときより多少の冷たさを感じるが、同時に爽快感にも包まれる。
タオルで顔に付着した水滴を拭き取り、鏡を見据えた。
年齢通りに見られることは皆無と言っていいほどの幼げな顔。
髪の毛はところどころ寝癖でボサボサ。
身長は平均を二回りも三回りも下回っている。
最近、出来始めた小さなにきびを気にしながら僕はため息をついた。
僕はこの容姿が嫌いだ。
いや、嫌いだった。
小さな頃から周りと比べても身長の低かった自分。
その頃はといえば、自分と他人を比較して、自分より弱い人をからかったりして楽しんだりすることが多い。
それを考えると僕がいじめを受けるのはある意味、必然だったのかもしれない。
みんなはふざけてるつもりだったんだろうけど、僕にそれは辛かった。
でも、僕はみんなに嫌われたくなくて、泣きたい気持ちを我慢して笑顔で返した。
たまに我慢出来ずに泣いてしまうときもあったけど、その時はあの子が側にいて慰めてくれた。
その時は別の涙を堪えて、笑顔で返した。
……どうせもう昔の話だけど。
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