《第一章》

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「はい、いただきます」 なにやら楽しげに僕の朝食を食べる姿を眺めてた母親がようやく手を合わせた。 なにが楽しいのやら…… パクパク、ムグムグ―― そんな母親をしり目に僕はさっさと朝食を食べ進める。 今日の僕の運勢が最悪だなんてテレビで言ってたけど、どうせそんなのは占いだ。 最悪の日でも最高の日でも変わらぬ一日が始まるだけ。 ただ最高だった人は朝からテンションが上がって、最悪の人は下がる。 ただそれだけのこと…… ようするに僕のテンションも朝から少しダウン。 「……ごちそうさま」 そんなに多い量の朝食じゃないし、さすがに満腹だとは言えないけど、これぐらいで十分だ。 僕は自分の食べた分の食器を台所へと運び、歯を磨くため再び洗面所へと足を向ける。 自分用の歯ブラシにどこにでも売ってそうな市販の歯磨き粉をつけ、歯を磨く。 毛先が広がってきたので、そろそろ新しいのに替えた方がいいかもしれない、なんて頭の片隅で考えた。 磨き終わると、それをペッと吐き出し、水で口を濯ぐ。 とりあえずこれで終了。 ピンポーン―― 呼び鈴の音が鳴り響く。 やばっ!! 僕はいそいで自室へと戻り、昨日の夜にあらかじめ用意していた学校の鞄――あの片手持ちの小さい奴――を引っさげて、玄関へと向かう。 学校指定のダサい靴に足を突っ込み、つま先でトントンと押し込むと 「いってきまーす!!」 といつもの癖で無意識に声を上げてからドアを開けた。
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