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―次もあるんだと思う。
俺の前に、先例という屍が横たわっていたから。
彼女から引き離されると、直ぐに別室に移された。
大きな…恐竜の肌をした体が横たわっている。
そこから、血液を取り出す。
その隣に拘束されるなど英雄の、待遇じゃない。
否、これが、戦果を上げた存在への待遇に違いない。
初めて、
夢にまで見るほど、
愛しい彼女に会えた。
それだけで死地に立つ意味がある。
造られた幸福感。
手足の拘束具など、あの幸福感の前に大した意味をもたない。
麻酔が打ち込まれる。
痛みの切れぬうちに、赤いものが、血管に注がれる。
静かに、
この幸福感でたゆたうのならば、
怖いものなど
無いはずなのだ。
喩え、色々なものを失っても…
それが、
彼女のためならば。
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