【a cashier -一期一会-】

①

僕とレジとの付き合いは、ついに半年になった。僕の()読みの速度は増し、()の中を読んでも同様しない力が身についた。
半年もレジ打ちをしていると、あの怪奇現象とも言える()の法則が大体掴めてきた。

まず、()の中の文は、お客の今一番強く思っている感情だということ。
そして、複数の商品を買った時は初めにくる商品に()が現われるということ。
()が見えるのは、店員で僕だけだということ。
一度、客に画面を見せて欲しいと言われ見せた時、なんの反応もなかったため、()は客には見えないということ。
レシートの商品名のあとには()が現われないということ。　
そして、人間はツマらないということ。

僕のシフト時間に問題はあるが…。
１０人に１人は女とヤることしか考えてない。
夜中に来る会社員は、仕事の愚痴。
僕と同い年くらいの奴は、誰々がウザいだの、この世がブッ潰れたらとか途方もなく馬鹿なことを考えている。

同じ内容のような()を何度も見る内に、僕は怒りを覚えるようになった。本当につまらん奴等だ。

最初のうちは楽しかった。
そりゃ、人の心の内を読むことが出来たから…。でも、そんなん最初だけ。毎日毎日同じ様な内容で、もう飽きた。　
たまには少しくらい面白いこと考える奴はいないのだろうか。