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僕の前に僕の頭一つ分背の低い青年がたった。カウンターにはガムが置かれている。何処かで見たような顔だが、思い出せない。一日何人もの人に会うんだ。似たような顔もあれば、常連もいる、この人見たなーなんてことは良くある話だった。 僕はガムを手に取り、バーコード読取り機をシマウマ模様にあてる。   [[ピッ]]   いつもやってしまう癖がある。そう()の中を読むことだ。僕は一瞬動きが止まった。手に持つガムにテープを張ってカウンターに置いた。青年が僕の手のひらにお金を置いたので、僕はレジを打ち、おつりを渡した。 急に手を掴まれた。 僕は驚いて手を即座に引っ込めた。 小銭がカウンターに落ちる。  僕は謝りながらお金を集め、次は確実に青年におつりを渡した。     心臓がバクバク鳴っているのが聞こえた。脳みそが心臓になったんじゃないかと思う程、僕の心臓は強く脈を打った。 こんな状況になったのは、あの青年の心を読んだからだ。あんな非常識で気持ち悪い()は初めてだった。     『男とヤりたい』     青年の()の中には、確かにハッキリそう記してあったのだ。    
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