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「もう、捨てられてしまったのかと思っていたわ」
懐かしそうにそう言うと、薬指に滑らせる。もともとしていたリングに触れ、リングが冷たい音を立てるのを、彼は黙って見ていた。
感情の見えない、彼女の整った横顔が、彼を不安にさせる。
「あの人らしい…」
妙に律儀なトコ、変わってないのね。と、彼女は苦笑まじりに小さく呟いた。呆れたような声音に、嫌悪感はない。
彼女の言葉に、彼はああ、とだけ言った。
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