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思わず話をふせる。
するとイヅルは唇を噛み締め、目を見開いた。
「ご冗談を…僕、知ってるんですよ?変装されていて気付きませんでしたが…はっきり覚えています。銀髪で赤い瞳をもつ貴方様を…」
まるで、この子は現場に居たような言いぶり。
「何で…知ってるん?」
震えるイヅルに優しく問い掛けると、涙を流した。
「僕の両親…殺されてしまったんです。僕は何時も通りにお客様に歌を歌って家に帰ったら……」
両親の無残な姿。
血まみれで腕は切断され、顔はわからないほどに刻まれていた。
真ん中では刀を持ち、返り血を浴びて嘲笑う奴の姿。
残酷な言葉がボクに突き刺さる。哀しいとか、酷いとかのレベルじゃない。
「僕は逃げて逃げて、生き延びました。その朝、僕は自ら父上と母上を火葬したのです。」
今のこの子の中には殺意、奴を殺したいという復讐の目をしている。
「両親の仇を討つため、奴を捜し…背後をとろうと思った時、貴方様が現れて一瞬で裁いて姿を消されました」
涙が溢れかえり、雫がイヅルの頬を濡らした。
「市丸様…貴方をずっと捜しておりました…お客様に名前を聞いては貴方様の情報を貰い何処でも歌って参りました…貴方様に……御礼が言いたかったのです…」
ありがとうございました、と、何度も頭を下げてイヅルは御礼を言う。
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