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「またあいつか……穴沢啓太(あなざわ けいた)」
朝の職員室は、1人の問題児の話題で持ちきりだった。
登校時刻を2時間過ぎて学校に現れた問題児は、玄関に入るなり教育指導の教師2人組に捕まり、朝から生徒指導室で尋問を受けることになった。
「穴沢……お前は何回問題を起こせば気が済むんだ?」
生徒指導室は、テーブルと植木しかない小じんまりとした部屋。
テーブルを挟んで向かい合って座り、生徒指導員が、問題児と呼ばれる穴沢啓太に凄んでいる。生徒指導員の隣では、学年主任がうなづきながら眼鏡の位置を整えた。
椅子の背もたれに体を預けている啓太は、まったく反省の色を見せていない。教師達の話など聞こえていないかのように、首を左に向け、偉そうに足を組んでいる。その態度が、教師達の神経を逆撫でする。
「今までお前は補導に飲酒・喫煙、問題を起こし続けてきたが、暴力事件……これが一番多いな。今日の朝も近所の方から通報があったぞ」
太い眉毛をつり上げ、啓太を睨みつける生徒指導員。肌の色は黒く、筋肉が充分についたその体は、普通の男より一回り大きい。
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