164人が本棚に入れています
本棚に追加
指導室を抜け出した啓太は、職員室の前の廊下を堂々と歩いている。目的地である裏庭へと向かうために、通らざるをえないのだ。
啓太がズボンのポケットから携帯電話を取り出すと、携帯電話は彼の手から滑り落ち、音を立てて冷たい床に落下した。
ひとつ舌打ちをして屈んだ啓太の耳に、職員室から発せられている複数の声が入りこんできた。
「今日もケンカですって。他校の生徒3人を血だらけにしたらしいわよ」
「例の派手な格好の生徒ですよね?保護者の方からの苦情がひどいんですよね。まったく、我が校の恥ですな」
啓太は携帯電話を拾い上げると、聞き慣れた自分の噂話を気にすることなく、再び歩き出した。
金色の髪、耳に光る大小多数のピアス。首からはシルバーのネックレスを下げ、腰の下まで下げて履いているズボンには、タバコとライターが入っている。
こんな格好をした生徒が問題を起こせば、話題になるのも無理はないだろう。
この学校という場所に居るのは、黒髪できちんとした格好をした子供がほとんどである。ましてや啓太の起こしている問題の数は、半端ではない。いくら義務教育といえど、そろそろお手上げである。
最初のコメントを投稿しよう!