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学校中の生徒にも先生にも、はたまた近隣の他校の生徒にまで、啓太の名前は知れ渡っている。
啓太のやっかいなところは、異様にケンカが強いことだった。
学年が替わる度にその年の"頭"、いわゆる学校で一番強いとされる者が彼に絡み、そのいずれも返り討ちにされてきた。そんな啓太は、廊下でちょっとぶつかっただけで、その相手に泣きそうな顔で謝罪される。
啓太が携帯電話をいじりながら玄関を出たところで、高音の機械音が学校中に響き渡った。授業の始まりを告げる、チャイムの音だ。おそらく今は3時間目あたりだろう。
啓太は裏庭に着くと、じりじりと照らす太陽から逃れるように、隅に生えている木の影に腰をおろした。もうじき10月に入る今もなお、暑さは衰えを見せていない。
空は啓太の心とは裏腹に、澄みきった青空が広がっている。啓太の心は、ぽっかりと穴があいているようだった。
「つまんねー……」
啓太はぼそっと呟くと、たくましい木の幹にその身を預け、携帯をサイトに繋げたまま、眠りにおちてしまった。
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