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軽快なリズムでクリスマスソングが流れている。街の至る場所にはきらびやかな飾り付けがされていた。
暦の上では冬。スケジュール帳には天皇誕生日から二日遅れてクリスマス、と簡単にある。その簡素な外国語は特に何か語る必要もなく、日本人の私にもそれだけで意味が通じた。
――今日はクリスマス。由来などはこの際どうとでもいい。日本においてこの日は、恋人たちと語らい、愛し合う日という認識が強かった。
「ええー、買ってくれるって言ったじゃん。クリスマスだよ、クリスマス。それくらいしてくれてもいいんじゃない?」
厚い化粧を施し、派手なコートを着込んだ女が彼氏らしき男に腕を回しながら歩いていく。
私はそんな風景をぼうっと眺めた。
「ごめん、待った?」
驚いて顔をあげると、先ほどから隣に座っていた女の待ち合わせ相手だった。
女は文句を言いながらも、嬉しそうに男の後をついていく。みんな、愛する人と一緒なのだ。なのに、私は――
「……孝」
愛する人の名を呼んでみた。返事は、ない。当然だ。
孝はクリスマスを待つことなく、死んだのだから。
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