慌てん坊のサンタクロース

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 携帯ショップを後にした私は、イルミネーションの綺麗なツリーまでやって来た。  一年前のクリスマス。私はここで、孝に告白された。  震える声で、好きだと言う孝に、私は返事しなかった。ケンタッキーの一件のささやかな復讐のつもりだったが、あまりに泣きそうな顔を見せる孝を見て、黙るのをやめた。  いいよ、と短く答えた私を、孝はぎゅっと抱き締めた。その腕は、私が思っていたよりもずっとずっと、力強かった。  しばらくの抱擁のあと、孝はプレゼントがある、と言った。けれどまあ、結論から言えば、プレゼントはなかった。 「あれ、どこだ? あれ?」  必死になって探す孝を見て、私は噴き出した。  孝は、どこかでプレゼントを落っことしてきたのだ。 「いいよ、来年で」  私がそう言うと、孝はほっとした顔を見せた。 「じゃあ、来年ここで渡すよ」 「わかった、来年ここね」  一年後の今日、孝はいない。プレゼントもない。きっと二年後も、三年後も、いや十年経ってもずっと、ないに違いない。私の愛した孝は、二度と私の前に現れることはないのだから。  私は今日、初めて涙した。一度溢してしまうと、もう止まらなかった。頬を伝って涙が零れ続ける。  孝、孝、あなたはどこ。孝、孝、何か言ってよ。  周りの恋人たちは、楽しそうに笑い合っていた。イルミネーションに彩られたツリーには、サンタクロースの人形がぶら下げられていた。そのサンタでさえ、笑っている。  あなた、サンタなら笑ってないでプレゼント頂戴よ。孝と会わせてよ。もう一度、孝と会わせてよ。孝と、孝と――
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