1 『十夜』

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 十夜の答えを聞き、男は見るからに落胆した。  尋常ではない男の様子に、十夜は心配そうに眉をひそめる。 「何かあったんですか?」 「あ、いや……」 「話してもらえません? 何かお力になれるかもしれませんし」  十夜の真摯な瞳は、彼の言葉が興味本位などではないことを物語っていた。  わずかな逡巡(しゅんじゅん)の後、男はぽつりと呟いた。 「娘が、いなくなったんだ」   
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