1 『十夜』

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 林は突然顔を上げて十夜を見た。 「そうだ、子守唄……」 「子守唄?」  十夜はきょとんとした顔で見つめ返す。  そういう表情をすると、十夜の顔にわずかに残るあどけなさが強調される。  記憶をたどるように、林は視線をさまよわせながら先を続けた。 「そう、最近になってから、窓の外を見ながら時々歌ってた。“ねんねんころりよ”って……」 「美緒ちゃんには、よくその歌を聞かせていたんですか?」 「いや、家内が奄美大島の出身だったから、そっちのほうの子守唄を聞かせていたよ」  
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