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林は突然顔を上げて十夜を見た。
「そうだ、子守唄……」
「子守唄?」
十夜はきょとんとした顔で見つめ返す。
そういう表情をすると、十夜の顔にわずかに残るあどけなさが強調される。
記憶をたどるように、林は視線をさまよわせながら先を続けた。
「そう、最近になってから、窓の外を見ながら時々歌ってた。“ねんねんころりよ”って……」
「美緒ちゃんには、よくその歌を聞かせていたんですか?」
「いや、家内が奄美大島の出身だったから、そっちのほうの子守唄を聞かせていたよ」
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