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「……返してもらえます?」
何気なくさらりと言った十夜の言葉に、女の表情がこわばった。
刹那、彼女の周囲を取り囲むように燃え上がる霊気。
女の全身を包みこむ青白い炎の渦に、長い黒髪が舞い上がる。
『真優(まゆ)ハ誰ニモ渡サナイ!』
彼女を守るように激しくくすぶる炎の渦から、火球がはじける。
無数に飛来するそれの間を縫うように、十夜は身をよじってかわした。
背後で軋むような音が響く。
火球を受けた樹の幹が、その身の半分を粉砕されたのだ。
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