1 『十夜』

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 そのとたん、急激に襲ってきた眩暈(めまい)。  よろけた拍子に民家の塀にぶつかり、そのままずるずると座り込んでしまう。  眼がくらみ、頭の中がぐるぐると回っているような嫌な感覚。  その中で、ラーメンの匂いだけがやけにはっきりと感じられた。  ラーメン!? こんな時に何で…… 「……もしもし~? 大丈夫ですか?」 「――!」  眼を開けると、街灯の光に浮かび上がる人影。  驚きのあまり、くらんでいた頭もぱっと目覚めた。  座り込んだまま、眼前に立ちふさがるものを見上げる。  
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