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小川弘一、57歳。
一政党の党員で、財力もそれなりにある。
地元では名士で通っており、そこらの庶民と比べれば何倍、いや何十倍もいい暮らしをしていると自負している。
彼は今一人で車を走らせていた。
天津山の山道を、山頂へと向けて……。
先程、一通の電話が彼の元へ届いたのだ。
この山で起こった5年前の事故――公表されたくなければ天津山の展望台へ来い、と。
女の声だった。
しかし小川に慌てた様子はない。
口止め料はアタッシュケースにしっかり詰めてきた。護身用の拳銃もある。
準備はぬかりないのだ。
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