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昼だというのに、急に視界が濃い霧に遮られる。
小川は舌打ちをしながら峠のカーブにハンドルを切った。
刹那、パン、という音と同時にハンドルが奪われる。
言うことを聞かないハンドルと格闘する小川を乗せて、車はカーブの向こうにある休憩用駐車場の中に突入していく。
半回転し、車は止まった。
大きく息を吐き、禿げあがってきた額に浮かぶ冷や汗を片手で拭うと、車を降りた。
小太りな身体を揺すりながらタイヤを確認する。
運転席側の前輪が、見事につぶれているのが一目瞭然だった。
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