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そこに立っていたのは一人の女だ。
白い霧の中に浮かび上がる黒のワンピース。
うつむいた顔は長い黒髪に半ば隠れ、霧のせいもありよく見えない。
女――電話の声の主なのか?
小川はスーツのジャケットの上から、ベルトに挟んだ拳銃を手探りで確かめた。
「もしかして、私に電話をしたのは君かね?」
「ええ。あなたは、五年前ここで子供をはねた小川さん、ですね」
それは質問ではなく、確認。
しかし小川は落ち着き払って言った。
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