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そんな事がありえるわけがない。
しかしまざまざと、眼の前に突きつけられたその光景――。
女の輪郭が揺らめき、たちまち青白い焔に縁取られたのだ。
彼女の身体そのものが炎で形成されているかのような――。
混乱する思考の中、手に当たった固い感触に我に返る。
護身用の拳銃の存在を思い出し、その手に構えて二人へと向けた。
それを見ても、女も青年も微動だにしない。
小川は心の底から湧き上がってくる恐怖に支配された。
理由は存在しない、生物としての本能が訴える恐怖――。
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