1 『十夜』

6/16
前へ
/69ページ
次へ
 見ると、軽トラックを改良した屋台が一台、暗い夜の公園の入り口に暖かい光を灯している。 「いや、でもそれどころじゃ……」 「お急ぎかもしれませんけど、腹が減っては何とやらですよ。さぁさぁ」  それどころじゃないのに、身体は青年に促されるまま屋台の方へと向かっていた。  コンテナの横側が開き、ちょうど庇の代わりになっている。  その端っこにある小さな白い提灯には、味のある筆文字で『十夜』と書かれていた。  男はあれよあれよといううちにカウンターの前にある丸椅子に座らされている。  
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

97人が本棚に入れています
本棚に追加