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澄んだスープから立ち上る湯気に、鶏ダシのかぐわしい香りを乗せたどんぶりが目の前に置かれた。
空腹男がどんぶりに飛びつくと、たちまち十夜のラーメンは平らげられてゆく。
十五分ほどが過ぎ、男はどんぶりをカウンターの上に置き、長く息をついた。
どんぶりの中にはスープ一滴残っていない。
見事に完食である。
「とてもおいしかったよ。こんなにうまいラーメンは久しぶりだ」
「本当ですか? ありがとうございます」
低くもなく高くもない澄んだ声の中にうれしさが響く。
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