Small Eyes

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「ママーっ!!」 ――私は、我に返る。 夕焼けを背に、保育園の玄関から、 2歳になった息子が、私めがけて駆けてくる。 正直、両親には、育児もお金も、さんざん助けてもらったけれど、 半年前には家を出て、2人で暮らしている。 保育士さんにも頼りっぱなしで、3日に1度は迎えに行くのが遅くなって、平謝りしているけれど、 私は柄にもなく、小さな会社で、バイトじゃなく社員として、こつこつ働いている。 「……私、子ども育てるためなら、なんでもやるよ」 もう一度、つぶやいてみる。 誰にも悪くない。 何も悪くない。 息子が私に抱きつき、はじけるように笑う。 小さい目が、細い細い線になるのが、 泣きたくなるほど、いとおしい――。
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