Small Eyes

2/4
前へ
/4ページ
次へ
3年前に付き合っていたのは、目が小さい人だった。 「ね、一生しないことって、何?」 ベッドで私の髪を撫でる彼に聞いた。 「レンジの歌の中で、何が一番好き?」と聞いたのと、同じ口調で。 彼は、手を止めずに答えた。 「なんだろ。自殺、かな。おまえは?」 「中絶」 彼の手が止まった。 びっくりしていた。 彼もびっくりすると、こんなに目が大きくなるんだ、と思った。 「私は、子どもできたら産むよ、絶対」 「……それ、相手が反対したら、どうすんの?」 『相手』ときた。 ひとごとなんだ。 「そしたら、別れるしかないっしょ。『相手』は私がいなくても生きていけるけど、子どもは違うもん」 「んなー……、つーかっ! 現実的に、育てていけねーだろ!?」 何をうろたえてるんだろう、この人。 「世の中、シングルマザーなんていっぱいいるじゃん。その人たちにできて、なんで私にできないわけ? 悪いけど、私、子ども育てるためなら、なんでもやるよ」 誰に悪いんだろう。 何が悪いんだろう。 会話は、そこで終わった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加