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3年前に付き合っていたのは、目が小さい人だった。
「ね、一生しないことって、何?」
ベッドで私の髪を撫でる彼に聞いた。
「レンジの歌の中で、何が一番好き?」と聞いたのと、同じ口調で。
彼は、手を止めずに答えた。
「なんだろ。自殺、かな。おまえは?」
「中絶」
彼の手が止まった。
びっくりしていた。
彼もびっくりすると、こんなに目が大きくなるんだ、と思った。
「私は、子どもできたら産むよ、絶対」
「……それ、相手が反対したら、どうすんの?」
『相手』ときた。
ひとごとなんだ。
「そしたら、別れるしかないっしょ。『相手』は私がいなくても生きていけるけど、子どもは違うもん」
「んなー……、つーかっ! 現実的に、育てていけねーだろ!?」
何をうろたえてるんだろう、この人。
「世の中、シングルマザーなんていっぱいいるじゃん。その人たちにできて、なんで私にできないわけ? 悪いけど、私、子ども育てるためなら、なんでもやるよ」
誰に悪いんだろう。
何が悪いんだろう。
会話は、そこで終わった。
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