商人と貴族

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初めて、俺とアレクが会ってから1週間が経った。 俺は2日に1回くらいの頻度で市場に店を出している。 そしてその度、アレクは俺の店に顔を出した。 その時はいつでも、最初に俺の店で買ったネックレスをつけて。 俺は今日も市場に店を出す。 他の客を相手にしている時でも、心では早くアレクが来ないかと思っている。 …結構、ヤバイんじゃないか?俺…。 その時だ。 「シエル!」 聞き慣れた声。 声の主は、 「アレク!」 俺が待ちわびた人だ。 アレクは長い髪を揺らし、こちらに走って来た。 「何?そんな急いで来て…。」 「いや、早く商品見たくて。」 …何だよ、ちょっと期待したのに…。 いや、期待って何だよ、おい…。 「これ、いいな。」 アレクの一言で我に帰る。 アレクが指差していたのは、シルバーのシンプルな指輪だった。 「あぁ、これ? こんなシンプルなのでいいのか?」 「…いいんだ。」 そう言って俺を見たアレクは、少し寂しそうな瞳をしていた…。
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