-帰る場所-

2/65
29人が本棚に入れています
本棚に追加
/115ページ
 朝になり、目覚めた私の視界に入った天井は、見慣れないものだった。 (…あれ?知らない天井……。ああそうか、私は今ティハシザーラとかいう世界にいるんだっけ…。)  やはり夢ではなかったのだと今更ながら思う。  起き上がり隣を見ると、赤紫色の髪の少女-サキ-が静かに寝息をたてていた。 (今更だけど…、この子達を信じていい…のよね…?まぁ、他に信じられるモノなんて何も無いんだけど…。)  そう、ここには私が知っているものなど何も無い。私を知る人もいない。 (私は…一人だ…。)  涙がこぼれそうになった目頭を押さえていると、隣で寝ていたサキが目を覚ました。 「…ん…。あ、マリナ…おはよぅ…。」  まだ眠そうに目をこすりながら朝のあいさつをする。 「おはよ。」  泣きそうになって震える声を隠すため、私は短く返した。  それでもサキは目ざとく私の涙を見つけたらしい。  そっと背中を撫でてくれる。 「大丈夫? 今日は学校はお休みだから、いろいろ調べられるから、がんばろう!」 「うん…、ありがとう。」  サキは明るい。  私はそんなサキを見て、3年前に転校していった梓を思い出していた。
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!