僕らの奏でる神のメロディー

プロローグ

～勇気の場合～

なんだか寝付けずに窓を開けると、月が明るく照らしている。ここ、ヴィザードは大気の変化が激しく、今日の様に穏やかな夜は珍しい。
勇気は、月の綺麗な夜が苦手だ。月には魔力を増幅させる力があるから。自分の中に眠る魔力を抑え切れなくなってしまいそうだから―。
『だけど…今日の風は嫌いじゃないな』
勇気は心地よい風を頬に感じながら、窓枠によりかかる。そして、思いに耽っていく。
『それに、僕は、もう一人じゃないんだから怖がることはないよね。心強い味方がついてるんだから。けど、もし君が僕の正体を知ったら？』
ブルっ。勇気は最悪を想定して軽く身震いする。
『大丈夫。きっと、まもるなら、大丈夫。』
それから、自分にそう言い聞かせ
「まもる、僕は君を信じてみるよ」
と呟いた。ベットの上でいびきをかくまもるには届かないことを確認して―。