116人が本棚に入れています
本棚に追加
──夜 23:00。
ネオンが眩しい歓楽街。
今日の獲物は何処だろう…。
すると一つの声に気が付く。
「すみません!すみません!あの…スーツは洗って返しますから!!」
人だかり。
中心には背の高いガラの悪い男が3人。
向かえ合っているのは自分の背中より大きなカバンを背負った…女の子?
「どーしてくれんのかなぁ…?
今から大事な取引先と会う予定だったんだけど…このスーツじゃ行けないよねぇ?」
「ご、ごごごご、ごめなさ…」
………あれ?
あのこ…。
考えるより先に体が動いていた。
いつの間にか僕は男3人と女の子の間に立っていて…自分でも驚愕した。
末期だ。
考えないで行動するのは頭が干物なダレカの専売特許だったのに。
まさか…この僕が…。
認めなくないが
コレが先輩の言う
『本能』ってやつなんだろう。
じゃあ、僕は本能の何に従っちゃったのかな?
それは…結構気になるね。
僕は女の子の手を引っ付かんで小声で囁く。
「…逃げるよ。」
「え?」
女の子と目が合った瞬間、男達の間を通り抜けて走り出した。
男達もハッとして追いかけてくる。
後ろから聞こえるガサツな怒鳴り声。
明るいネオン。
反射する眼鏡。
小さすぎる握った手。
僕らしくない。
自分から面倒な事に首突っ込んで…。
僕らしくない…。
路地裏に入ると怒鳴り声も遠くなっていき
どうやら巻いたようだ。
3回深呼吸すると
隣に視線を向ける。
「大丈夫?」
荒い息を繰り返しながら僕の方に振り向く。「ら、らいじょうぶ、です。助けくれて、ありがとうございます」
言いながらニコォと笑った。
(…あれ。この子…)
一瞬、彼女が誰かに重なって…すぐに消えた。
最初のコメントを投稿しよう!