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「えっ!良いんですか?!」
「うん。どうせ暇だったしね。」
彼女は僕の手を握りブンブン上下に振りながらお礼を何度も言った。
大袈裟すぎるその反応も嫌じゃなく…むしろ新鮮で心地良い。
これは久しぶりの
大物か?
だから僕の本能が?
でも…なんだろう
それも違う気がする。
──…路地裏から抜けて少し歩き出した。
「…で。
探してる人なんだけどさ。紙に書いてあったの全然覚えてないの?」
「…えっと…紙というかハガキなんです。
そこに住所が書いてあって…でも…かなり昔のハガキなんです。
もう…そこには居ないかも「大丈夫だよ」
「え?」
別に嘘を吐いた訳でも吐こうとした訳でもない。
そんな根拠もない台詞が急に出てきたんだ。
「…大丈夫だよ。
僕も僕にできる事、するから…」
あぁ…このセリフだって僕のセリフじゃない…。
なんなんだよ…ホント…
(調子狂う…)
「ありがとう…ございます。」
「…敬語じゃなくて良いよ。普通に話して。」
「はぃ…じゃなくて…うん。ありがとう…えっと…」
彼女はチラリと僕の目を見た。
そういえば、まだ名前も言ってない。
「僕の名前はウラ…」
言いかけて口を閉じる。
いつもナンパする時は良.太郎の名前を借りている。
今日だってそうすれば良い……今日だって…
「…ウラ…タロウ…」
僕は彼女の視線を外し、少しうつ向いて呟いた。
「浦太郎さん?変わった名前だねぇ…。
私はリョウ。リョウって言うんだァ。改めてありがとう、浦太郎さん!」
フワリと笑う彼女。
「り、良─…?!!;;」
「はい?」
わかった!!
ずっと誰かに似てると思ってたんだよ…
(名前まで…;)
この子…
──…(良.太郎に)
(…似てる、んだ)
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