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「あら…?めざまし止まっちゃったわ。
…朔ちゃんったらまた寝ちゃったかしら?」
台所にいた朔華の母・燈織(ひおり)は、のんびりと呟くとトントンと軽やかに階段を登って行った。
「さぁくちゃん!もう朝よ。起きなさぁい!!」
朔華の部屋の前に着くと、中に向かって声を掛けた。
返事はない。
ガチャ…
「朔ちゃん…いい加減起きないとママ…怒るわよ……?」
朔華のベッドに浅く腰掛け、耳元で優しく言った。
その目は…笑っていなかった。
「……あと、2時間…………。」
そう言う朔華を見下ろし、燈織はポケットからケータイを取り出すと………。
「あ、聖蘭女学園でしょうか?わたくし、2年に在籍しております、安龍朔華の母ですが、箕郷(みさと)先生はいらっしゃいますでしょうか?
…………あら、箕郷先生ですか?安龍朔華の母ですが、朔華ったらちょっと体調がすぐれないようで、休ま………………「ないから!!バリバリ元気です!お母様!!!」
…………だそうですので、今日から5日間どうぞよろしくお願い致しますね。先生。
では、失礼致します。」
強行手段で゛超゛が着くほど低血圧の朔華を起こしてみせた。
「おはよう。朔ちゃん。よく眠れて?」
さっきのことなどどこ吹く風と、他人まで巻込んで娘を起こした燈織はにこやかに言い、朔華はそんな母にちょっと青くなりながら、言った。
「サイコーに目覚めの良い朝だよ!」
よくあるはずのない、安龍家の朝だった。
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