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今宵は満月
レキアは、キウルとふたりで屋根の上で座りながら月を見ていた。
「きれいなお月さまだね。」
「そうだな」
レキアの声に答えたのは、キウル。
「あのね、私、月をみてると勇気が出てくるの。」
「うん。」
「だからね、行けるんじゃないかって思うの。…行けるかな?」
「行けるよ、僕が導くんだから。」
「そうだね、…行ってみようかな?」
「行ってみる?」
レキアは、キウルに問いかける。
「でも、そしたらキウルは消えるんだよね」
「僕は導くものだからね。レキアを導いたら僕の仕事は終わりだから。」
キウルは、そっと立ちあがる。
「行かない?そこは、素敵な世界だよ。」
歌うように言葉を繋いでいく。
「苦しいことも、悲しいこともないんだ。君の幸せだけを願ってる世界だから。君を幸せにしてくれる。」
レキアの瞳が揺れる
「この世界は痛いだろ?君を苦しめて、悲しませるだけ。君はどれほど泣いた?どれほど、その心に傷がつけた?」
キウルの言葉は、レキアの心の中に入っていく。
「もう、楽になっていいんだよ。よく頑張ったよ。でも、誰もその頑張りに気づいてくれなかったんだよな。」
「…キウル…。」
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