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新月の夜、キウルは、レキアと共にいた屋根の上で座っていた。
そこへ、一匹の赤い首輪をつけた黒猫が鈴を鳴らしながらやってきた。
キウルはそれに気づくと、目を細める。
「なんか用か?」
「んー、特にないんだけどさー、アンタが後悔してるんじゃないかと思って。」
「…後悔?」
「うん、してるら?」
猫はいつの間にか消え、赤い首輪をつけた黒服の少年が近づいてきた。
「素敵な世界って、そんなところに、死に神の俺らが連れてけるって思ってるのー?」
「…煩いな、苦しみからも悲しみからも逃げれるのは本当だろ?あの子も幸せだ」
「あんなにもあの子の心の中を掻き回しといて?苦しみの絶頂にいた人間が優しくしてくれるやつに縋るのは当たり前でしょ?そこを利用したんだろ?…違うって言うわけ?そんなわけないよね?」
神経を逆撫でするように少年は言う。
死に神が連れていける場所は天国ではない。
だが、地獄でもない。
死に神は、人の魂をまるでパソコンのデータを初期に戻すかのように、魂を初めに治すのだ。
それは、魂のリセット。
今までの魂の記憶を全て消して、無にすること。
魂が生まれてからの記憶がすべて消える。
その魂の本当の生涯が終わることになるのだ。
そして、魂は新しく生まれ変わることになり、また、新しい輪廻を廻ることになる。
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