雪のおかげ

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「駅まで歩くの?凍え死ぬわよ」   優花は真紀に言葉をかけた。 真紀はマフラーを巻きながら   「フル装備ですので」   そう言いながらバッグから手袋とニット帽をだした。   「送ってやれよ」   智之は少しふて腐れていたが、この天気は心配のようだ。   「それもそうね」   そう言うと優花は 「あぁ見えていい人だから」 と、耳元でささやく。 すると真紀はちょっとだけ不安げな顔でうなずいた。 優花は真紀を車に乗せると、滑らないようにゆっくり車を走らせた。 歩くと5分の距離だが、雪が積もった今日はそう言うわけにはいかないだろう。   「しかしラッキーだったよね。遅刻もしてみるもんだね」   真紀は微笑むと   「ありがとうございます」    と小さな声で言った。   「そうそう、うちのバンドはメンバー同士の敬語禁止だからね」   このルールは優花が決めたものだった。 1番年上の優花は敬語を使われる事で、自分がおばちゃんに見られてる気がするからだ。
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