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「それ、で…。私への選択肢は何があるの?」
小声で見えない者へ問い掛ける。
『…主へ我が与えられる選択肢は二つ』
一つ、強さとこの試合を拒否し、日常へ戻る。
二つ、強さを求め、この試合と我を受け入れる。
『二つ目の選択肢は荊の道。心身共に苦しい道となる』
それでも、強さが欲しいと願うか?
「私、は…」
少女が、二つ目の部屋を確認したらしく、ゆっくりと私が居る部屋へ向かってくる。
怖い、恐い!
本当はこんな事から今すぐ逃げ出したいし、全てを拒否したい。
なのに、そうしないのは、何故?
考え込んでいると、見えない者が私へ語り掛けてきた。
『…それでも、主が荊の道を選ぶのならば』
我は、全力で主を守るぞ?
そう言う見えない者の声が、酷く優しくて。
何だか、落ち着くよう。
…あぁ、そうか。
私は、この人を信じているのだ。
出会って数十分。
私を認め、受け入れ、守ると言ってくれたこの人を。
信じたいのだ。
「…私は、貴方を受け入れる!」
その言葉と同時に、少女が部屋に入ってきた。
「あ、いたいた!」
嬉しそうに話す少女の言葉は、もう入ってこない。
『…良く、言ってくれた。ならば我の名を叫べ。
我の名は…』
「さぁ、アナタはここでオシマイよ!」少女の手に握られた札がバチバチと電流を帯びる。
しかし、もう恐怖は無い。
私は一度目を瞑り、ゆっくり開いて、叫んだ。
「阿修羅っ!」
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