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殴られていた少女が『私』にお礼を言って、何処かに行った後。
『私』が口を開いた。
「勝手に出て来てすまぬな。今、代わる」
…代わる?
なに、それ…。
そう疑問に思った次の瞬間、一瞬だけ目の前がクラリとしたかと思ったら、見えない鎖からの拘束は解かれていた。
ゆっくりと手を握って、開いてを繰り返してみる。
「…動、く」
『我が勝手に主の体を借りてたからな。体が主の意思とは関係無く動くので、驚いたろう?ほんに、すまなかった』
誰かの、声がする。
でも、分かる。
これは、"実際に存在するモノ"の声ではない。
否に頭に響く、少しだけアルトが掛った声。
これは、生身の人間のモノでは、ない。
「…だ、れ?」
ゴクリ、と唾を飲み込む。
酷く喉が乾く。
少し、声がかすれた。
『我は、主の願いに答えし者』
「ねが、い?」
私が願ったもの、って…。
―…強さが欲しい
「あの、願いを…?」
『さよう』
ずっと、ずっとずっと前から願っていたソレを、叶えてくれたと言うの?
でも…。
「なん、で?」
『?』
「何で、貴方は…。わ、私、なんかの…。あんな願いを、叶えて…、くれる、の?」
駄目だ。
声がかすれる。
何回も何回も、唾液を飲み込んで、必死に声を出す。
何故、こんなに喉が乾くの?
見えない存在への、恐怖?
声だけの存在への、不安?
だが、例えそれが
恐怖だろうが
不安だろうが
どちらにせよ、今は知るしかないのだ。
ひとつ、ヒュッと音を立てて息を吸い込み、
「何故、貴方は私に強さを与えてくれるの?」
見えない者へ、尋ねた。
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