1章 誓いの時

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  殴られていた少女が『私』にお礼を言って、何処かに行った後。 『私』が口を開いた。 「勝手に出て来てすまぬな。今、代わる」 …代わる? なに、それ…。 そう疑問に思った次の瞬間、一瞬だけ目の前がクラリとしたかと思ったら、見えない鎖からの拘束は解かれていた。 ゆっくりと手を握って、開いてを繰り返してみる。 「…動、く」 『我が勝手に主の体を借りてたからな。体が主の意思とは関係無く動くので、驚いたろう?ほんに、すまなかった』 誰かの、声がする。 でも、分かる。 これは、"実際に存在するモノ"の声ではない。 否に頭に響く、少しだけアルトが掛った声。 これは、生身の人間のモノでは、ない。 「…だ、れ?」 ゴクリ、と唾を飲み込む。 酷く喉が乾く。 少し、声がかすれた。 『我は、主の願いに答えし者』 「ねが、い?」 私が願ったもの、って…。 ―…強さが欲しい 「あの、願いを…?」 『さよう』 ずっと、ずっとずっと前から願っていたソレを、叶えてくれたと言うの? でも…。 「なん、で?」 『?』 「何で、貴方は…。わ、私、なんかの…。あんな願いを、叶えて…、くれる、の?」 駄目だ。 声がかすれる。 何回も何回も、唾液を飲み込んで、必死に声を出す。 何故、こんなに喉が乾くの? 見えない存在への、恐怖? 声だけの存在への、不安? だが、例えそれが 恐怖だろうが 不安だろうが どちらにせよ、今は知るしかないのだ。 ひとつ、ヒュッと音を立てて息を吸い込み、 「何故、貴方は私に強さを与えてくれるの?」 見えない者へ、尋ねた。  
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