1章 誓いの時

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  『…主が誰よりも強く其れを願ったからだ』 「…え?」 意味が、分からない。 私が強く願ったから何だと言うのだ。 こんな願いなら、私よりも強く願った奴らが沢山いるだろうに。 何故、私なのだ? 『主の願いは、一点の曇もなく、只々輝き、とても美しかった。』 私の願いが、美しい? 『強さが欲しい、というのは弱かれ強かれ、誰しも一度は願うものだ。与えられた者の殆んどは、その強さを自分の為に使う。』 他人の為でなく、な。 そう続けてる言葉。 淀みなく流れる言葉に、何と無く気持ち良さを感じる。 『力を誇示する為だけの者に、我は力を貸したくなど無いのだ』 はっきりと言い切った見えない者の言葉に、少しぼんやりとする。 『それに、』 そう言って続けられる言葉に、ぼんやりとした意識を集中させる。 『主が願った強さは、喧嘩云々の強さだけでなく"勇気"と言った面での強さもあるのだろう?』 そこも、気に入ったのだ。 そう言って見えない者は、にこりと笑ったような気がした。 私は…。 願いが光っていたから。 自分の為でなく、他人の為に『ソレ』を使う、と。 この人は、思ったというの? そう、感じたというの? 『お前の為ならば、喜んでこの力を貸してやろう。 …但し、それには一つ、条件がある』 「…条件?」 自然と俯いてしまっていた、顔を上げ、考え事をするべく明後日の方向へ持っていった意識を、見えない者へ注ぐ。 『さよう。それは…、』 「みぃつっけた♪」 後ろから聞こえてきた、若干高めの声に、思わず体をビクリと震わせ、それが聞こえた方を振り向く。 「ふぅ。中々見付からないものなんだねー。」 何が?何を? あなたは、誰? 見えない者がした、舌打ちが、やけに心に響く。 「だからね?貴方が私にとって記念すべき一人目の『魔なる物を秘めし者』なんだぁ」 魔なる物を秘めし、者? 「そして、記念すべき…」 『危ない!避けろっ!』 その声に、右へ半ば転がるようにして飛び退く。 「私へ一勝目をくれる人なのよね!?」 バチッ! 音が聞こえた方に反射的に目を向けると、さっきまで私がいたそこに、焦げ目が付いていた。 女の子の両手には何枚かの札が握られており、それがバチバチと放電していた。  
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