1章 誓いの時

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  「な、何あれ…っ!」 『兎に角、何処か死角になる所へ逃げろ!』 今すぐだ! 今まで落ち着き払っていた見えない者が、慌てた声で叫ぶ。 私はその叫び声を合図に、まるで何かに引きずられるようにして走った。 見えない者が叫んだ声が、まだ心の中でビリビリと震える。 「あれぇ?逃げちゃうんだ。戦うんじゃなくて」 戦う? 冗談でしょう! 私は普通の女子高生なのよ!? 出来るわけ、ないじゃないの! 生きてきた中で"一番じゃないか"と言っても過言ではないぐらいの早さで私は走った。 廊下の突き当たりを左へ曲がり、手前から三番目にある教室へと入った。 ヒタヒタと歩く少女の足音が不気味に廊下へ響く。 他の生徒はどうしたの!? 先生は!? 授業の始業の時間はとっくに過ぎているというのに、どうしてチャイムは鳴らないの!? 知らない 分からない 怖い こわい コワイっ!! 『落ち着け、千夜里(チヨリ)』 「…っ!?なん、で…、私の名前…」 『お前の心の中に居るのだぞ?名前ぐらい分かって当たり前ではないか?』 あぁ、そうか。 なんて納得してしまう私は、この十数分の間に不可思議で非現実的な『この』経験に慣れてしまったということかしら? 『いいか?時間が無い。簡潔に述べるぞ?』 「何、について…?」 わざわざ聞かなくても…、 『力を手に入れるための…  条件について、だ』 分かっているけど、ね。 あぁ、やっぱり。 この状況に大部慣れちゃってる。  
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