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「な、何あれ…っ!」
『兎に角、何処か死角になる所へ逃げろ!』
今すぐだ!
今まで落ち着き払っていた見えない者が、慌てた声で叫ぶ。
私はその叫び声を合図に、まるで何かに引きずられるようにして走った。
見えない者が叫んだ声が、まだ心の中でビリビリと震える。
「あれぇ?逃げちゃうんだ。戦うんじゃなくて」
戦う?
冗談でしょう!
私は普通の女子高生なのよ!?
出来るわけ、ないじゃないの!
生きてきた中で"一番じゃないか"と言っても過言ではないぐらいの早さで私は走った。
廊下の突き当たりを左へ曲がり、手前から三番目にある教室へと入った。
ヒタヒタと歩く少女の足音が不気味に廊下へ響く。
他の生徒はどうしたの!?
先生は!?
授業の始業の時間はとっくに過ぎているというのに、どうしてチャイムは鳴らないの!?
知らない
分からない
怖い
こわい
コワイっ!!
『落ち着け、千夜里(チヨリ)』
「…っ!?なん、で…、私の名前…」
『お前の心の中に居るのだぞ?名前ぐらい分かって当たり前ではないか?』
あぁ、そうか。
なんて納得してしまう私は、この十数分の間に不可思議で非現実的な『この』経験に慣れてしまったということかしら?
『いいか?時間が無い。簡潔に述べるぞ?』
「何、について…?」
わざわざ聞かなくても…、
『力を手に入れるための…
条件について、だ』
分かっているけど、ね。
あぁ、やっぱり。
この状況に大部慣れちゃってる。
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