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猫が死んだ日
僕の家にはヒマラヤンという種の猫がいた。
ペルシャと何かを混ぜた猫らしく、とにかくペルシャをフカフカさせたような猫だった。
名前はアンと名付け、その由来なんかはもらったブラジル人の頭文字をとったものでその他に深い理由は無い。
今思えば僕の飼っていた猫は、現在も暮らす雑種のクロと亡くなったアンの二匹だけで、それ以外は特に猫と縁があるわけではなかったのだが、いつのまにか猫の存在が気に入り、今では旅先で猫をみると立止まり、話しかけ、ときには写真も撮るほど気に入った存在なのである。
この話の本題はアンが死んだときなのだが。僕は当時中3ながらにも引籠り-いや旅もでてたし…-アナーキーという風な態度をとっていたし、それとは別だが感情なんて親にも誰にもみせたくなかったし、猫がよりそってきても喜怒哀楽のどの文字もあてはめず、ひたすら時間を潰していたものだ。
それがある日になると、親が急いで扉を開け部屋に入ってき、涙ぐんだ様子で僕の前に一つの箱を置いた。
その中には数日前までじゃれてきていた猫が横たわり、冷たく固まっていた。
いつもイスの上で横たわり日向ぼっこしてた猫が今度は冷たくなっていた。
もう一度日向に当てたが、表面の毛だけがぬくもりを浴び、アンの体の冷たさはかわらなかった。
僕は硬直した猫をゆっくり抱き上げ、久々に、泣いた。
もう感情なんていらないと思っていた生活は、ねこの犠牲一つでまともな生活に戻れたのだ。
涙はひたすら猫の体にかかり。
また箱へとゆっくり戻した。
何を考えるとか、何を求めていいのかとか、わからなくなり。
数週間後
初めて東京へと行ってみた。
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