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「ん、んなこと言ったって…
一日中考えたけど全然わかんねぇし…考えれば考えるほどお前に足りないものなんて無い気がして、コンプレックスってゆうか…お前のこと羨ましくなってきたりして……そんで…頭ん中ぐるぐるして…その…、」
ついついたまっていた感情を少しだけ吐き出してしまった俺は、なんだかものすごく恥ずかしい気がして、後ろめたさに更にうつ向いた。
なんでこんなこと言ってんだよ俺は…
そんな、田島に言ったってどうしようもないのに
ああクソ
やべー
なんかスゲー自分が情けねぇ
暫く続く沈黙
只でさえ恥ずかしいのにこの沈黙は拷問だ、そう思って視線をあげるとキョトンとした田島の顔。
「……」
「な、なんだよ」
「オレのこと考えてたの?」
「は?」
「今日一日オレのこと考えてた?」
じっと見つめられて口ごもる。
「……そう、だけど」
ボソッと小さな声で呟くと、その途端田島が抱きついてきた。後ろはロッカーだし、俺は床にしゃがみ込んだ状態だったため倒れはしなかったが
少しバランスを崩しロッカーがガタンと音をたてた。
「ちょっ、おい!」
まさかいきなり抱きついてくると思わなかったからびっくりして声をだす。
ぎゅうっと首に抱きつかれて苦しい。
ついでにさっきから背中に当たってるロッカーも痛い。
「くっつくな」と言おうとしたら田島が口を開いた。
「オレ花井のことゲンミツにスキだから!ぐるぐる悩んでる花井も、練習一生懸命な花井も、授業中のメガネかけてる花井も、みんなスキ!!」
「た、田島?」
「でも試合中、ネクストからオレのこと見てる花井がイッッチバン好き!」
え……?
「花井の顔直接見えるわけじゃねぇけど真剣な視線感じんの、そうすっと『打たなきゃ』って思うんだよね!!」
「そんで花井がオレをホームに帰してくれる時メチャクチャどきどきすんの!」
田島は体をおこすといつもの、真夏の太陽のようにニカッと笑った。
「だから今日一日オレんこと考えててくれたってだけでうれしーや!」
そういうと田島は抱きついていた腕を外してひょいっと立ち上がる。
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