Happy Birthday

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  「花井!」   朝グラウンドにいくなり、突然後ろから呼びかけられた。   振り返るとそこには既にユニフォームに着替えたあいつの姿。 いつものように「はよ」と挨拶すると、田島は唐突に「はいっ」と手をだした。   出された手にはなにも乗っていない。   その手の意味がわからなくて、俺は目の前の手と田島の顔を見比べる。   「な、なに…」   「プレゼント!」   ニカッと笑う田島の顔に更に困惑する。 どうやらプレゼントを「くれ」と言っているようだ。   なんだっていきなり田島にプレゼントなんてあげなければならないのか…     「プレゼントって…なんで」   「だって今日俺の誕生日だもん」   「へ?」   田島の言葉に10月のカレンダーを頭の中に思い浮かべながら今日の日付を思い出す。   10月16日   そういえば前、篠岡がもうすぐ田島の誕生日だなんて言ってたっけか…   「あー……お、おめでとう?」   とりあえずありきたりなお祝いの言葉を口にすると田島はちょっと不満そうな顔をした。   「気持ちがこもってねー!つーか花井俺の誕生日忘れてただろー!ひっでーの」   「わ、わりぃ…」   「三橋も栄口もすぐメールくれたし水谷たちだってオメデトーって言ってくれたのにさぁ」   むぅ…っとまるで小学生のように頬をふくらませて睨んでくる田島に俺は困り果てる。   この時期は秋大もあるし、定期テストだって近い。 やらなければならないことが山積みで他のことに頭が回らなかったのは確かだ。   今ここでなにかあげられれば田島の機嫌も治るのかもしれないのに、生憎なにも持っていない。   あーポケットに飴玉のひとつでも入れておけば良かった   「だからごめんって…後でなんか買ってやるから」   な?といっても田島の表情は変わらない。 いつもならこれで上機嫌だってのに今日はまだ食い下がってきた。   「やだ!俺傷ついたもんねー!」   「…じゃーどーしろってんだよ」   困り果てた俺は田島に問いかけた。 すると田島はうーん…と唸ったあとニカッと笑って言った。                   「今日の放課後、部活終わるまでに俺の一番欲しいもの当てたら許してあげる」                    
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