Happy Birthday

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  「い、一番欲しいもの…?」   たっぷり10秒はかかってその言葉を理解した俺はようやく口をひらく。 すると田島はニコニコ笑いながら言った。   「そ!それくれたらチョーウレシイけど、当てるだけで良いや」   「ちょ、」    「じゃ!放課後楽しみにしてんな!」   田島は自分のことだけ言い終わると、人の話をきかないで元気に俺のわきを通り過ぎていった。 その小柄な背中を呆然とみつめながらつぶやく。   「……なんなんだよ…一体」                               練習中も授業中も、朝の田島の言葉が気になって教師の言葉はただ頭の中を通り過ぎるだけ。     テスト前の大事な時期だってのに、どーしてくれんだよ田島のやつ! つーかこんなん気にしなきゃ良いのになんだってこんなに悩んでんだ俺は   …………… もーいいや!忘れよ!     そう思っても忘れるどころか昼休みのときすら俺の頭はあいつの言葉に占められていて、考えても考えても答えなんて浮かんできやしない。     欲しいもの…ってことはあいつが持ってないもんだろー…? 田島に足りないもの…   ……………   べ、勉強できる頭…とか?   いや、いくらなんでもねーな。   頭以外に足りないもんなんて、 ねぇじゃねーか…   ずば抜けた身体能力 他に類をみない程の野球センス 誰にでも好かれる性格 清々しいくらいの脳天気さ   羨ましい程なんでも持ってるあいつに足りないもんってなんなんだ!   「あーーーくそっ!わっかんねーっつの!」   「おわっ!?な、な、突然どしたの!?」   俺が突然声を上げたせいか、前の席で気持ちよさそうに寝ていた水谷が飛び起きた。   「あ、わりぃ…ちょっとイライラしてたもんで…」   「べ、べつに良いけどさ。それにしても珍しいねー花井がそんなにイライラしてるなんて。」   水谷はよいしょっと後ろ向きで椅子に座りなおすと俺の机に肘を乗せて頬杖をつく。   「そおかぁ?いやーちょっと朝田島に言われた言葉が頭から離れなくて…」   「田島?」   「今日あいつ誕生日じゃん?そのことすっかり忘れてたらあいつ怒っちまったみたいでさ」   「それで?何いわれたの?」     「『俺の一番欲しいもの当てたら許してあげる』」          
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