speck's -スペックス-

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「チャート一位を記念し…乾杯~!!!」 ビールジョッキが音を立てる。 「今日は事務所の経費で落とすからな!どんどん頼めよ!」 「あざぁっす!!!ささ、北さんもどうぞどうぞ!」 鎌さんが北チーフプロデューサーのグラスにビールを注ぐ。 「亮也くんもどんどん頼んでいいからね。」 大桑亮也…当時中学3年生。 「ここ居酒屋だぜ…?食えるもんねぇよ…」 バシッ! 「…すみません北さん…。関係ない弟まで御馳走になっちゃって…。」 殴られた上に、無理やり頭を下げさせられる。 クソ…。 「はは!いいんだよケンジくん!お礼なら事務所に言ってくれ!」 とりあえず、唯一食えそうなナンコツの唐揚げを頼んだ。 「いやぁここまで来るのに長かったなぁ…。」 鎌さんがホロリと涙を流す。 「ケンジィ…!ドラム放浪者だった俺を拾ってくれたお前のおかげだよ~!」 鎌田は兄貴に抱きつく。 「…でも本当にケンジのおかげだよ…。曲書いてるのお前だし、ファンも全員お前目当てだし…。」 ……コイツら堅っ苦しいなぁ。 「でもさ…」 兄貴が口を開く。 「…スペックスは俺と、鎌田と、茂元と、田原の四人で構成されてんだ…」 !? どうした!?兄貴! 「俺一人じゃ、スペックスとは言わねぇよ。」 !? …うわぁ……。 「ケンジィ…!」 皆、一斉に兄貴に抱きつく。 …コイツらキモいな…。 つかなんで俺がここにいるんだ… …!家に夜飯がなかったんだ。
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