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足取りも重く会社に向かう。いつもだったら満員電車の中であってもイライラなどしないが今日と言う日は違う。満員電車で足を踏まれ、鬼の形相で睨み付けたりしてしまう。
品川で乗り換え山手線でやっと座る事ができた僕は、海蘭の事をぼんやりと思い浮かべる。
海蘭が3歳の頃から2人で暮らしてきた。
嫁が死んでしまった時も3歳とは思えない程、気丈に振る舞っていた。
その姿にパパは涙を堪えきれなかった。
ちょっと頼りないパパを支えてくれたのは海蘭で。
嫁が死んで自暴自棄になったパパを救ってくれたのも海蘭で。
今まで2人で支え合ってきた。きっとそれはこれからも変わることは無いと思っていた。
あぁ。分かってる。そんな風に変わらずにいられることなんてないと。
子供はいつか親から旅立つ日が来るわけで。
僕がそうであったように。いつかは親から旅立っていく。
これはこの世界の中で、数少ない普遍的なことだ。
分かってはいてもまだ心が、まだ頭がそれを受け入れようとはしない。
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