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「ぱっと見片付いてるけど実はまだだよね」
「いや、ほとんど詰めたし」
「え、机汚いけど」
「うるせ」
里沙は再びベッドを軋ませながら立ち上がると、部屋をくるりと見渡した。あ、俺と同じ事した、なんて考えて、頬が緩むのを必死で隠した。
俺は昔から里沙が大好きでたまらなかった。
口悪いし、気は強いし、怒るとハンパなく怖いけど、根は優しいし、ふと見せる“オンナ”の顔はめちゃくちゃ可愛いし、何よりも、十年以上も一緒に居るのに飽きないし、もっと一緒に居たいと思える。でもきっと、ベランダ伝いに俺の部屋へやって来る時、ミニスカから覗く太股にドキドキが止まらなかった事や、里沙が寝ている時にどうにも押さえられなくて、キスしてしまいそうになったりした事は、知らないんだろうなと思う。
「あれ、この写真たち持っていかないの?」
「あー…かさばる」
「あ!このキーホルダーは?」
「…つか勝手にあさるなって」
里沙は机の引き出しも一つ一つ開けて、「これは?」とか「いらないならこれちょーだい!」とかやっている。次々に出されていくそれらは、全て里沙との思い出が何故か詰まっていて、俺はココを離れても里沙の事を引きずらないよう、全部置いていくつもりだった。里沙との写真も、勉強が苦手な俺のために選んでくれた問題集も、「よく似合ってるね」と言ってくれたダークブラウンのジャケットも。
しかし里沙はいつの間にか隅に積まれていたダンボールを持ってきて、勝手にそれらを詰め込みだした。
「ちょ、おい、いらねぇって!」
「なんでよ、持ってけばいいじゃん」
「そんなに置けないし、」
「写真ぐらい…」
「わざと置いていくんだよ!」
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