笑顔でバイバイ

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どきん、と大きく心臓が跳ねた。 握った里沙の手は、だんだんと熱を帯びてきていて、俺の心臓は一層動きを早めていった。 「っ、行かない、でよぉ…北斗…!」 里沙はそれだけ言うと、鳴咽が止まらなくなってしまい、本格的に泣き崩れた。 あぁ、里沙も同じ気持ちだったんだ、という喜びと、正面から向き合わずに自分の気持ちを封印しようとしていた己の愚かさに、俺も、頬を濡らした。 「好きだ…」 「ほく、…」 「好きだよ、里沙」 もっと早くに素直になっていれば。こんなにお互い悩まなくてもよかったかも知れない。でも、それでも、こうして気持ちを伝えられたことは、俺にとっても里沙にとっても、プラスになることなんだろうと思いたい。 「ねぇ」 「何?」 「…キス、しないの?」 「は!?」 勇気を出して、後ろからきゅうと抱きしめた直後、里沙から思いもよらぬ事を聞かれた。「や、タイミングってもんが…」とか思わず口走った俺は、やっぱりただのチキンか。 「…寝てる隙にクチビル奪おうとしたくせに」 「なっ…!」 「そうか、それが北斗のタイミングなのか」 バレてた。結局未遂で終わったあの時に、まさか気付いていたなんて。俺はもう、恥ずかしさと情けなさと、あとは…あぁもうどうでもいいや。 「キス」 「…なんだよ」 「し・て・よ!」 「は!?」 「なんならディープなのでもいいよ?」 「~!!」 .
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