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「香ちゃん。ちょっと付き合ってや。」
穣先輩はそう言うとニッコリ微笑んだ。
「でも…私…」
穣先輩は自分の腕を押さえると…
「ここめちゃくちゃ痛かったんだけど…」
そう脅迫めいた言葉を吐くと私の手を掴んで歩きだした。
私も引かれるがまま歩きだす。
そんな先輩の手はどこか温かく優しかった。
そうして辿り着いた場所は三年の教室の上にある屋上。
そして大きな重いドアを開けるとそこには桜の花びらが一面に落ちた屋上でまるでピンクの絨毯をひいたみたいだった。
校舎に一番近い大きな桜の木から風に舞この場に落ちてきたのだろう。
「ここ…いつも俺が居る場所だからいつでも来いよ。なっ。香ちゃん。」
その瞬間私の目からは涙が勢い良く溢れ出し大声を上げて泣き出した。
そんな私を優しく抱きしめてくれたのは目の前に居る穣先輩だった。
穣先輩の学ランからは仄かに香水の匂いとタバコの匂いが混じってて…
その香が何故か心地よくて…
久しぶりに幸せを感じていた。
そして初恋を感じた放課後だった…
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