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だからこの機会に1人になろうと決意していた。
そう…
クラス替えが行われるこの中学校入学と言う時を私は心底待ちわびていたのだ。
教室に入ると直ぐに席順表が配られた。
それを見ながら私も席につく。
私の席は幸いにも窓際の一番後ろだった。
重い鞄を下ろし机の中に教科書を揃えて置くと私は何もせずに窓の外に目を移す。
誰も居ない校舎の中庭がそこから見えた。
その中庭にはパンジーの花が沢山咲く花壇が円形状に作られてあった。
パンジーを囲むように鮮明な赤色を放つサルビアの花が風に揺れその周りを紋白蝶達が飛び交う。
そんな静かに流れる風景をただ私は頬杖をついて横目で見て居た。
「ども。」
そんな私に話しかけて来たのは見たことのない顔の隣の席の男の子だった。
私は黙って頭を下げるとまた窓の外に目をやった。
「綺麗だよね。パンジーとサルビア。」
何?
この人…
そう思いながらその男の子の顔を見るとその男の子は我に返ったかのようにハッとして私を見た。
「ごめん!俺ばっかりペラペラ喋って!」
そう言いながら慌てその男の子は席に座った。
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