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動かない先輩の体を何度も何度も揺すりながら呼び続ける私の声は悲鳴にも近かった。
「どうして…どうしてこんな事!」
私は周りに居たみんなを睨みつけながら怒鳴つける。
みんな下を向いたまま何も言おうとしなかった。
「香ちゃんの為だよ。」
陰から聞こえた声の持ち主…
聞き覚えのある声。
そう…
人ごみをかき分け現れたのは宗吾先輩だった。
「香ちゃん。あんたをこの場所から逃がす為に穣が身代わりになったんだよ。」
いつにない宗吾先輩の真剣な顔が状況を物語っていた。
「私の…?」
それでも私には宗吾先輩の言う意味が分からなかった。
「香ちゃんの同級生だったっけ?昨日の男。あいつの言う通りだって穣言ってたよ。」
昨日?
あの時先輩達見てたんだ!
私はハッとして穣先輩を見た。
「俺には2人の事は分からない。けど香ちゃんと穣じゃ所詮住む世界が違いすぎたんだよ。頼むからこれ以上穣を苦しめないでやって…。」
「宗吾!やめ…ィテ…」
その時穣先輩が声を張り上げた。
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