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瞬は押されるがまま私と穣先輩の所まで歩み寄ってきた。
穣先輩を見た瞬の手には思いっきり力を込めているのが一目で分かった。
「小僧…香を頼む。」
穣先輩は自由にならない体を無理して瞬に頭を下げた。
「先輩…やめて…イヤだよ…先輩のそばに居たいよ……好きなの…離れたくないの。…けど怖かったの…私にもよく分からないけど…怖かった…」
そう泣きながらすがる私の髪の毛をかきあげて先輩は笑顔をくれた。
そしてその笑顔の瞳には零れそうなくらいの涙が溢れていた。
「香…お前をあの時車に乗せなきゃ良かった。…決めたんだ。俺が…。もう会わないって。」
会わないって…
その言葉が私の胸を突き刺した。
「やだよ!私ここにいる!先輩の所に居たいの!お願い!そばに居させて!」
私は泣きじゃくりながら先輩の胸にしがみついた。
「もう好きじゃないんだ。嫌いになった…。」
先輩の嘘が体中を震わせた。
「嘘よ!そんなこと…!」
「嘘じゃない!」
そう言うと私を勢いよく突き飛ばした。
私はよろめきながら後退りすると瞬に支えられた。
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