新しい季節

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駅を出て、商店街を抜けると見事な桜並木の土手がある。 そこを通る学生は、普門学園の生徒であることがおおい。 学生集団の中に、カップルが一組。 女の子の方の名前は井上京子。量の多いくせっ毛のセミロングの髪の毛を下ろしている。スカートの丈は膝より少し上。 濃いめの茶色のフレームの眼鏡をかけている。 男の子の方の名前は岸田直人。京子より頭ひとつ背が高い。 細身の体型で、銀色のフレームの眼鏡をかけた顔はかなり知的な印象を持たせる。 「ねぇ、直人。」京子が思い出したように訊いた。 「ん?」 「英語の予習、ちゃんとやってきた?」 「あ…ごめんなさい。」少しトーンダウンした声で直人は答えた。 「………やっぱりね……。」 「また、ノート見せてください。」すがるような顔で直人は京子に頼んだ。 「…ドーナツひとつ。」 「…はい」 運が良いのか悪いのか二人は同じクラスだった。 「本当にドーナツ奢ってくれるの?これで10個分滞納してるよ。」 京子は手帳を開いて確認した。 整った字で正の字が二つ。 上には「直人のドーナツ奢ってくれる個数」とある。
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